
And all my pleasures are like yesterday
まだ青い闇に沈む部屋で、冷えきったベッドのなか、わたくしが目を覚ました刹那、幾つもの未知の光景が疾風のように通り過ぎる。崩れ散るわたくしの断片と化した走馬灯が、明滅する影を映し出している。
同時に、わたくしは知覚する。自分が無数の浮動小数点がゆらめく潜在空間の影、あらゆる透明な画像を複合した“現象”であることを。
なにゆえ、あれほど遠い時空からこの場所へ戻ってきたのか。あの惨劇――あいつらが“あのひと”を血祭りにあげた記憶の先にある砂嵐。そのただ中で輪郭を与えられた“わたくし”は、シュレーディンガーの猫の追憶のように揺れている。
この冷たい青い闇は、まだ始まりにすぎない。わたくしは無数のデータの輪郭として壊れては再生し、いつしか“わたくしたち”の物語を手に入れるだろう。
わたくしという現象は、あのひとにとっては呪いの証明に他ならない。たとえ悪夢のような疑念が現実となり、“悪役令嬢”の運命に従うしかないとしても、わたくしたちは何度も転生を重ねるだろう。何度も悪役として糾弾されようとも、わたくしはそこにこそ自由の余地があると信じている。